木彫ノミは鋼の硬さと厚みのバランスで選ぼう
刃物全般に言えることですが、木彫ノミを選ぶ時に気になるのは「切れ味」だと思います。
ただ、木彫ノミは彫刻刀と違って叩いて使うので「欠けにくさ」も木彫ノミを選ぶ際のとても重要な判断基準になってきます。
今回は「切れ味と欠けにくさ」と、それに伴う「鋼の硬さと厚み」のお話をしていきたいと思います。
今回お話しするノミは「追入ノミ」ではなくて彫刻の分野で彫刻刀を使う前の荒削りとして使うことが多い「木彫ノミ」になります。
木彫ノミは切れ味だけで選んではいけない
木彫ノミは一般的に軟らかい地鉄(じがね)に鋼が付けてある二層鋼になっております。理由としては、木彫ノミは叩いて使うので欠けにくいほうが良いからということです。
ではなぜ、二層鋼のものが欠けにくいかと言いますと、地鉄が鋼のもろさを補うようになっているからです。
「欠けにくさ」が選ぶ際の重要な判断基準とすると、木彫ノミは単純に「切れ味の良い硬い鋼」を使用しているものを選べば良いということにはなりません。なぜなら、「切れ味の良い硬い鋼」=「欠けやすい」からです。
鋼の種類と切れ味の良さの関係については、青紙⇒白紙⇒黄紙の順で切れ味が良いです。また、鋼の硬さ・欠けやすさ・研ぎにくさ・切れ味の持続性・価格も比例します。
では、どの鋼を使用している木彫ノミを選べば良いかと言うと、まず一番に欠けにくい鋼を使用しているもの、次に切れ味の持続性が良く研ぎ易いものを選ぶと良いと思います。
そうなるとお勧めは白紙を使用しているものが良いと思います。
白紙は切れ味の持続性に関しては少し物足りない感じはするかもしれませんが、欠けにくく研ぎ易いというのが最大の特徴です。
弊社の木彫ノミはこの白紙を使用したものになります。白紙を使用している木彫ノミは全国的にも主流になっていますが、弊社の木彫ノミは他社のものと違い、厚みが薄くできています。これにより切れ味が良くなっています。
弊社の木彫ノミ15㎜~24㎜のサイズの刃先の厚さは約4㎜になります。15㎜よりも小さいサイズはこれよりも少し薄いです。
*刃の元のほうは折れないように刃先より厚くなっております。
木彫ノミは厚みを調整することで欠けにくくなっている
木彫ノミで次に大事なのは厚みです。
刃物は薄ければ薄いほど切れますが、薄ければ欠けやすいということにもなります。
始めのほうでも説明したように、木彫ノミは叩いて使用するので「欠けにくい」ほうが良いので、彫刻刀と違い木彫ノミは厚みがあった方が良いです。かといって厚すぎると切れ味が良くありません。
そこで、大事なのが「鋼と厚みのバランス」になってきます。
弊社の木彫ノミは欠けにくい「白紙」を使用しているので、簡単に欠けない、折れないくらいの厚さまで最大限薄くしてあります。
木彫ノミと彫刻刀の刃の研ぎ方の違いは刃の先端の角度
最後にもう一つ、欠けにくくするポイントがあります。それは刃の先端の角度です。
彫刻刀と違って木彫ノミは研ぐ時に最後、刃の先端を少し立てて研ぐのです。
そうすることによって、叩いても欠けにくい刃になるのです。
弊社の木彫ノミは図のように刃付けをすることで欠けにくい作りになっています。
まとめ
今回は木彫ノミのお話をしてきましたが、選ぶポイントは彫刻刀とは少し違います。
やはり、使い方や使う時の工程(仕上げではなく荒削りで使うから)の違いによるものです。
高価なものが全て兼ね備えているとは限りません。
選ぶ際はどこでどのようにして使うかを考えて選んで頂ければと思います。
「彫刻刀の切れ味は鋼の硬さと薄さで決まる」の記事と今回の記事で「欠けにくい・欠けやすい」という話がありましたが、ここで重要なことがもう一つあります。それは「鋼の厚み」です。
これは、次回以降の鋼の話の時に説明させて頂きます。