安い彫刻刀と高い彫刻刀の違いについて
彫刻刀を購入する際に価格は気になるところだと思いますが、まずは「高価=良い」「安価=悪い」ではなく、価格の違いで何が違うのかをご理解いただいた上で選んでいただけると良いかと思います。
何が違うのか
いくつか違いがあるので紹介していきます。
鋼(材料)の違い
価格に一番大きく関わってくるのが鋼です。
単純に硬い鋼を使用しているものは高価になります。以前のブログでも説明いたしましたが、鋼は硬ければ硬いほどよく切れ、切れ味の持続性(切れ味の長持ち)があります。ですが、硬ければ硬いほど欠けやすかったり、研ぐ時に大変だということも一緒に憶えておいて下さい。
また、硬くない鋼を使用しているからと言って切れないわけではありません。切れ味の持続性という点では硬い鋼には劣りますが、欠けにくかったり研ぎやすいという利点もあります。
硬い木を彫る時は硬い鋼を使った彫刻刀を使用した方が良いと思いますが、消しゴムはんこなどの軟らかいものを彫る場合は硬い鋼にこだわらなくても良いと思います。
ただ、彫った断面は硬い鋼を使用した切れ味の良い彫刻刀の方が綺麗に仕上がったり、彫る時にいらない力が入らないので彫りたい場所を無理なく彫ることが出来ると思います。(技術でカバーできる方は例外ですw)
ちなみに弊社の彫刻刀は鋼の中でも硬いと言われている「青紙スーパー鋼」を使用しています。
工程の違い
次に価格に関わってくるのが工程(作り方)です。
作る時の工程でどれだけ手作業があるのか、どのくらい時間がかかっているのかなどが価格に関わってきます。
価格を抑えるポイントとして、プレスで形を抜いているとか、刃付けを機械で自動で研いでいるなどがあります。
柄の違い
基本的に柄に木を使用しているものは高価になります。木の種類によっても価格は変わります。
柄に使用される木の種類としては朴木、サクラ、などがあり、それぞれ触り心地も違います。
また、柄に刃を入れる時の工程でも価格は多少変わってきます。木にそのまま差し込むタイプのものと、木を張り合わせるタイプのものがあります。
学童用のものなどは持ち手が短かったり、ゴム製で滑りにくかったりと使いやすく利点も沢山あると思います。ただ、柄から出ている部分を使い切ってしまうとそこで終わりですが、木の柄に入っているものは木の柄を削っていけばまだまだ使えます。長く彫り物を続けようと思っている場合は木の柄の彫刻刀の方が良いかもしれません。
ちなみに弊社の彫刻刀の柄は「朴木(ほおのき)」の張り合わせを使用しております。
まとめ
冒頭でも話したように、「高価=良い」「安価=悪い」ではなく、鋼や工程の違いで価格に違いがあることをご理解いただければと思います。
硬い鋼を使用している高価な彫刻刀でも、研ぎの精度がイマイチだったり、厚みがあって切れ味があまり良くないものもあります。逆に言うと硬くない鋼の安価な彫刻刀でも、研ぎがしっかりしていれば切れ味は良くなります。
「高価=切れる」とか「安価=切れない」という固定概念にとらわれず、どんな彫り物をするか?使用頻度はどのくらいか?などによって、ご自身に合った彫刻刀を選んでいただければと思います。